放射線治療
放射線治療
放射線治療とは、がんに放射線を当てて、がん細胞を破壊してがんを消滅させたり縮小させたりする治療のことです。 放射線治療の利点は手術によって臓器を切除することなく、臓器の働きをがんになる前と同じようにすることが期待できます。 がんの種類によって放射線治療の効果(効きやすさ、治りやすさ)は大きく異なり、治療する部位によって副作用の起こり方もさまざまです。 放射線治療を行うかどうか、またどのように行うかを放射線治療医が計画を立てその指示のもと診療放射線技師が治療を行います。
放射線治療の流れと所要時間
1. 診察
放射線治療医が診察を行います。 放射線治療が適応であると判断された場合は放射線治療の内容が説明されます。 このときに治療期間や副作用等の説明を受け、治療を行うかどうか決定します。
2. 治療計画(シミュレーション)
実際に治療を行う前にCTシュミレータを使って腫瘍の広がりを確認し、その後皮膚に直接マジックで印(毎回の治療時に同じところに放射線を照射するため)を付けます。 頭部や頚部に照射を行う場合はシェルと呼ばれる固定具(マスク)を作成し、それに印を付けます。 治療計画装置に転送後、放射線治療医により放射線を照射する範囲や方向、線量を決定します。
3. 治療
治療計画をもとに放射線を照射して治療を行います。 1回の治療時間は治療の部位や箇所にもよりますが、着替えも含めて10~15分程度で、実際に放射線が照射されているのは、1~2分程度です。 初回及び治療期間中、定期的に治療計画で決定された照射野と実際の照射野が一致しているか確認するために撮影を行います。 その際は、通常よりも5分程度長く時間がかかります。
治療は月~金曜日の週5日(土・日・祝日は除く)続けて行ないます。 照射回数は、治療内容にもよりますが10~36回(2~7週間)で行ないます。
4. 経過観察
放射線治療期間中は週2回、放射線治療医による診察があります。 予定された治療が終了したあとも数ヶ月に1回、放射線治療医による診察を行ないます。 また治療期間中、または終了後でも体の症状で何か変化が感じられたときや質問等がありましたら、いつでも担当医、放射線技師、看護師にご相談ください。
注意事項
- 治療中は動かないようにしてください
治療中に身体が動きますと照射位置がずれ、腫瘍に十分な放射線が当たらなかったり、周りの正常な部分に悪影響をおよぼす可能性があります。 痛み等で長時間じっとしていられない方は、痛みによる配慮を行ないながら治療を行う場合もありますので事前に申し出てください。 また、治療装置が回転しながら治療する場合もありますが、装置が身体に触れることはありませんのでご安心ください。
- 放射線治療のスケジュールを守りましょう
正常細胞は放射線のダメージからの回復する力がありますが、がん細胞は回復する力がありません。 毎日、正常細胞が回復できるぎりぎりの放射線を照射することによって正常細胞を回復させながら、がん細胞をどんどん死滅させていきます。 そのためには、出来るだけ休まずに頑張りましょう。
- 治療中は治療室内には患者さん、1人になります
治療中の様子は操作室のテレビモニターで技師が様子を見ていますので安心して治療を受けてください。 マイクを通して会話も出来ますので具合が悪いときは手・足等で合図をするか、声で知らせてください。
副作用について
放射線治療は、放射線が照射された部位に一致して副作用が現れます。 副作用には、治療期間中や治療直後に現れる急性反応と数ヶ月~数年たってから現れる慢性反応とに分けられます。 症状の現れかたや時期には個人差があります。 代表的なものは以下の通りです。
- 全身の倦怠感(疲労感・だるさ)
疲れやすい、だるい、気力がでない、などの症状が現れることがあります。 治療中は過渡の運運動は避け、疲れやだるさを感じたら、無理をしないで休みましょう。 このような症状は、一般的に照射が終わると自然に軽減していきます。
- 放射線皮膚炎
放射線が照射された部位の皮膚に赤みが出たり、かゆみや、かさつきがみられたりする軽いやけどのような症状が現れ、照射回数によっては色素沈着がみられる場合もあります。 対策としては、衣類は皮膚に刺激しないものにして入浴やシャワーは、ぬるめのお湯で刺激の少ない石けんを使って泡で流すようにしましょう。痛みや熱感が強いときは冷やすと軽くなります。 なお、かゆみ止め等の軟膏などの塗り薬もありますので医師・看護師等に相談してください。
- 脱毛
頭部に放射線を照射すると頭皮が荒れたり、毛の根元にある細胞が影響を受けることによって脱毛が起こることがあります。 一般的に治療が終了すれば、毛髪は生えてきます。 髪を洗うときは地肌を強くこすらないように注意して洗い、すすぎはぬるま湯で流す程度にしましょう。 したがって、頭部以外に放射線を照射した場合は放射線の影響で髪の毛が抜けることはありません。
- 放射線性肺炎
胸部に放射線を照射した場合、肺に影響がでることがあります。 肺の組織が炎症を起こして放射線性肺炎と呼ばれる状態になると、発熱、長引く咳や呼吸がしづらくなる症状がおきることがあります。 この炎症は、治療中または治療後、数年たった後でも起こることがありますのでこのような症状が現れた場合は受診してください。